【報告】「今、日本の保育で何が課題なの?」——「保育の質は大人の質」私たち大人1人1人が、子供の環境をつくっていく。


去る2018年11月3日(土)、オール大人で向き合おう「今、日本の保育で何が課題なの?」 登壇ゲスト3名に加え、参加者30名と運営5名、秋晴れの空の下にぎやかに開催いたしました。

保育士、幼稚園教諭、保護者、地域の大人、親子に関した企業経営者、子育て支援者……色々な肩書きの方が集まってくださり、濃密であっという間の2時間半。本当にありがとうございました。

告知記事で参照させていただいた『赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない。』の著者・境治さん(!)、その書籍を出版してくださった三輪舎の中岡祐介さんも来てくださいました(嬉しい……)。

毎日新聞の方も「幼保無償化についての反応、特に賛成の方のご意見が聞きたい」と、直近の課題を持ってご参加くださいました。

ゲストスピーカー3名のお話を聞きながら、エッセンスを書き出してもらいました。Aさん、ありがとう! 今回の記事はここから……☺️

(ゲストスピーカーの皆さんの詳しいプロフィールは、イベント告知記事からご確認ください!)

平井亙さん「地域のつながり。対話の文化」「今、日本で出来ることは、場づくりと情報発信」

最初に、広報・デザインの世界から保育業界に飛び込んだ平井さんの感じている「保育の課題」を伺いました。


高齢者の方々との関わりや、イタリアのレッジョ・エミリア訪問で得た感覚などにもふれながら、奥底にある熱い想いを丁寧にお話くださいました。

・「保育の価値を社会に見える化したい」「自分の想いを子供に伝えたい」と、保育業界に飛び込んだが……
・コミュニケーション・デザイナーの自分にできることは何か?

・中に入って気づいた課題:
①保育士離職/保育士不足(によって運営母体の採用費ばかりが膨らみ、子供の環境整備の予算が消えていく……)
 ↓
②離職の背景にあるのは人間関係/低い待遇に見合わない仕事量。
 ↓
③自己肯定が下がり、承認欲求が高まる保育士たち。
 ↓
④転職に向かう悪循環。
 ↓
施設単位での問題解決に限界。地域を巻き込む必要性がある。

・レッジョ・エミリア等に共通の価値観「子育ては地域全体でするものであり、大人の責任である」そのために「成熟した市民社会(自律した市民)」「対話の文化」を築くこと。

・「子どもは個人の市民である」「子どもは権利の主体である」「子どもは豊かな天性の素質と可能性、精神力、創造性を持っている」——諸外国で語られている子どもたちの権利について、日本は意識が低い。

・今、日本で出来ることは、場づくりと情報発信。
・幸福感を形成する「健康」「人間関係」そして「自己決断」を大切にすること。


平井さんは現在、日本全体の保育の質向上にもつながる保育情報誌「ぴいる」の発行や、保育に関わる人々が集って話し合える場:ほいくのえんがわ「ぴいるCafe」開催など、課題解決に向けて行動されています。

レイモンド保育園、社会福祉法人檸檬会から新たに生まれた「ぴいる」……(レモンのピール✨)今後の内容も楽しみです♪


久保田修平さん「日本の保育は遅れている」「保育の質は、すなわち大人の質」

次に、ずっと保育士として働く中で日本の保育に疑問を持ち、600日間25カ国(!)世界の保育を訪ね歩いた久保田さんが、現在感じられている「日本の保育の課題」。

久保田さんは「課題だけでなく、すでに解決策が大体見えています」と大変テンポ良く、実際に訪ねられた海外の保育の写真も多く見せていただきながら、ポイントにまとめてお話くださいました。


・「子供の主体性/権利というが、現場はどうか?」「今の生き方が豊かな生活と言えるか?」というモヤモヤから、一時離職して、夫婦で世界へ……
・世界を見て感じたこと。「日本の保育は【30年】遅れている」
・保育や教育は様々あるが、基軸になりつつあるのが「森のようちえん」「イエナプラン」「ゴダーイ」「テファリキ」「モンテッソーリ」「シュタイナー」→日本の保育には?
世界が「保育の質」にシフトしている中、「保育者と園児の割合」「公財政教育支出の割合」「保育“者”のスタイル(諸外国では制服なくゆったりとした私服/タトゥーの人もいる)」日本はすべて昔のまま、更新されていない……。
・例えば、デンマークの保育士は「保育中にティータイムの時間」=保育者にゆとりがあり、保育者たちが本当に楽しそう!←大事!
・「与える/指導者/伝える」という昔の保育教育の在り方から、世界は「引き出す/観察者/見守る」にシフト。日本は未だ前者、見守ることが放任や過保護になっている事例も。
・乳幼児期に生きる力=自分で自分の人生を作る力が育つ。失敗する経験を奪わない。

・感じている保育の課題:「教えるから引き出すへ」「量から質へ」「保育者のゆとり」「自治体へのアクション」「働き方・暮らし方のシフト」「AI・ロボットの普及」「対面コミニケーションの機会を増やす」

・保育の専門性を高めるには「知識/実践力」と「人間力/感性」の2つが大切。自分を高めることで「楽しい!」へ。

・保育/社会を変えるためには……「自分の人生は自分で作る」「頭より感覚を大切にする」「保育者の専門性を高める」「暮らし方をイノベーションする」「共生」「市民としての政治参加」

・保育の質は、すなわち大人の質。

最後に「21世紀型保育」や「ヒュッゲ」「復元力」といった言葉にも触れられました。


久保田さんたちは、帰国後「世界の子育て、保育を知る旅」を振り返りながら、「保育の専門性を高める会 -education journey-」という勉強会も定期開催されています。

そして現在、「世界の子育て、保育を知る旅」の書籍化に向けて、クラウンドファンディングが始まっています!!! 2/20まで!!!

記事を書き上げるのが遅くorz すでに当初想定の金額は達成とのことですが(素晴らしいです✨)追加リターンも考え中とのこと。勉強会の情報も書籍化も、ぜひチェックしてくださいね!


保育士おとーちゃん@須賀義一さん「今の日本、子育て上手くできなくて当たり前」「子育てのHUBとなる保育施設へ」

最後に、元保育士であり家事育児の専業主夫も経験された視点で、日本の子育てに真摯に向き合うブログが大きな支持を集めた、「保育士おとーちゃん」こと須賀さんにお話をいただきました。


課題①:保育の質の低さ。専門性がない保育。
・課題②:日本の保育に蔓延する、過保護と過干渉。自己決断を奪われると、大人も子供も「怒り」になる。のに……子供の決断を気づかず奪っている大人、子供の反応は「ごねる」と表現されてしまう。
・課題③:「孤育て」。都会はもちろん、地域のつながりがあると思える地方でも、子育ては孤立している。
・「親なんだから」という、保育者も含めた周囲の意識。
クレームや早期教育熱の裏にあるのは、親の不安/辛さ。親の不安を子供が解消しようとして「いじめ」等が発生する。早期に親の心のケアを。

子育て支援は「寄り添う」から。
今の日本は「子育て上手くできないのがデフォルト」上手くできなくていい、当たり前!……を出発点にすること。

保育施設の役割として「子育てに関する親の相談」「孤立した親のサポート」を。→保育士の社会的立場があがる可能性。
「子育てのHUBとなる保育施設」へ。保育施設は子育て支援の場になるべき。保育の専門性を知らせる場にもなり得る。

実際にあったクレームとその対応等も詳しく紹介いただきながら、課題提起の下に、あたたかい受容を感じるお話でした。

須賀さんには、先日12/6の子育て相談会にもお越しいただきました。
報告記事はこちら:
【報告】保育士おとーちゃん曰く「子供の姿は“私”だけがつくってない」——本当の尊重とは? ネガティブな個性/ダメな親の不安/支配・被支配、みんなで越えていこう。
https://mazaruterasu.blogspot.com/2018/12/blog-post.html

今度3月10日(日)には10時〜14時とたっぷり、世田谷区・桜上水「井戸端マザーハウス」さんでも子育て座談会が開かれるそうです。日曜開催! 気になる方はお早めにご予約を。

須賀さんご自身でも「2019年はいくつか会を企画してみようかな」とお話されていました。

「あなたの感じる課題は?」グループに分かれて話し合ってみよう。

休憩を挟んだ後、保育者・保護者・それ以外の方々が均等になるよう、3グループに分かれました。ゲストのお三方に各グループを見てもらいながら、自己紹介と「自分の感じている保育の課題」「グループごとのテーマ」について話し合いました。



グループワーク共有「保育の質って何?」「環境?働き方?」「保育園はハブとなるえるか?」

最後に、3グループそれぞれ「どんなテーマについて話したか」「どういった話が出てきたか」を、場全体に共有してもらいました。ありがとうございます!



「経営者/運営母体の意識、制度や仕組みに課題がある」……「民営化反対だが民間園のほうが子育て支援事業に関わっている事実」……

自己紹介や課題のお話ひとつひとつが興味深く、「全グループ全員を網羅したい!」脳内で叫んでいました……



「保護者は何を求めているのか?(日本では保育者に余裕がないという話もあったが)保護者の多くも余裕がない」……「今、子供たちの育つ環境から、“生活する”という要素がなくなってきている」……



アンケートより「心に残ったこと、思うこと」いくつか紹介

久保田さんの「保育の質は、即ち大人の質」「子どもの失敗する権利、怪我する権利をうばってはいけない」という話、須賀さんの「過保護で子どもの自己決断の機会を奪うと駄々っ子になって現れる」「"ちゃんとしなきゃ"の抑圧から大人が解放されれば寛容な社会になる」という話が心に残りました。
「子育てはまちづくりと共に」「レッジョ・エミリアのごとく」「幸福感の大きな一つが自己決定できるかどうか」「親支援の緊急性」……3人のゲストの方々のお話、心に響きました。高齢者問題も合わせ、実現できる拠点を作りたいと思っています。しかし現体制で、行政の資金援助はむずかしい。悩める昔の乙女です。 
登壇者も集まった方々も素晴らしかったと思います。「保育の質」「生きる力」とは何か、普段語り合えないことを語り合えたこと、また自分にはなかった見解をたくさん頂けて刺激が大きかったです。
育休中の今、園見学などで保育の現場を少しずつ見始め、「こんなにも自分の子どもを預けたいと思える園は少ないのか……」とこれからの自分の子育てに、また日本の保育の未来に不安を覚え始め参加させていただきました。課題は根深いですが、それでも真剣に考え続ける保育士さん達がいらっしゃることを知って心強く、また、保護者・一社会人として私にもできることは様々な形であるかもしれないと感じました。
色々な立場、考えの方が集まっていたことが印象的でした。皆さんが考えや想いを持ち、子育て環境、保育環境を良くしていこうとする姿に刺激を受けました。また世界の保育、子育て環境を取り入れたいなぁ。どんな人もまず受け入れる心を持ちたい。親を責める観点ではなく「どうしてかな?」という想像力を持ちたい。「親はこうあるべき」という考えを自分が取っ払うこと。保育や子供の前に、1人の大人として自分が1日1日少しでも何か行動していくことが大切だと思いました。より活動を具体化したい気持ちが大きくなりました。
こういうのいいなと思いました。聞くこと、話すこと、シェアすること大事だなと。 参加させてくれてありがとう!!
保育士にゆとりがなさすぎるんだなと。日本でも、コーヒーブレイクできるぐらいの余裕を持って保育にあたれる日が来るのか!? クレーム対応の話、すごく心に刺さりました。
保育のクオリティについてやりとりがなされましたが、保育士と保護者でも想定するものが異なっているようでしたし、保育士間でも様々だったので、議論がかみ合って深くなるには至らなかったと思います(保育する/してもらう目的や立場、保育哲学や経験が異なるためでしょう)。ただ、そうした立場の違いを実際に感じることも貴重な機会だと感じました。 今回で時間が足りなかった、というよりも、こうした試みを継続してくださることを期待しております。
「日本の保育で何が課題なのか」という議題に対し、お三方が提起された課題には、どれも納得させられました。ただ、今回は現場の保育士さんや保護者の方が多く、辛辣な意見もたくさん出てきていて、まだまだ経営側と現場の溝は深く、ここも改善されていかないと課題は解決できないのではないかと思いました。
1番の感想は「参加させてもらえて良かった!!」ということです。皆さんの熱い思いを聞き、沢山パワーを頂きました。「自分が今できることは何か?」と考えさせられました。 悩んでばかりでしたが、「それでは前にも後ろにも進めない。まずはやってみよう!」と背中を押していただけた、そんな会でした。
ゲストの方、まざるテラス代表の方のお話に感銘を受けました。また、グループワークで参加者の皆さんと膝を突き合わせて熱く語り合ったこと、とても楽しかったですし、こんな機会は他になく、新鮮でもありました。保育や子育てについて、こんなにも熱い思いを持った人がいるんだと実感できたこと、そのために行動されている方々の姿に、勇気とエネルギーをもらいました。
「保育の課題とは?」のテーマに反応して、中野区議会議員の、広川まさのりさん/山本たかしさん/渡辺たけしさん(あいうえお順)も、お忙しい中に参加してくださいました。ありがとうございます!
「保育の現場、世界の保育事情など、多岐にわたり、様々なお話を伺うことが出来、大変勉強になりました。今回のお話を活かした質の高い保育施策を中野区でも展開していきたいと強く思いました」「中野区と他区の保育環境の違い、中野区内での保育の課題について、現場の方々のご意見を伺いたいと思いました」
とのことですよ、中野区の子育て世代の皆さん、一緒に期待しましょうね……!!!

おまけで、嬉しい感想も一部を貼っておきます。
まざるテラスの活動は素晴らしいと思います。こういった活動をされる場所がもっと広がるような仕組みができあがればいいと思います。
まざるテラスさんのような居場所作りを私も始めてみたいと思います。今回、参加したことで自分の住む町を大切にして、より良い環境作りをしていきたいと思うようになりました。
嬉しい……!!!!!(伏せ泣き)

「イベントが1発花火になりませんように」そんなことを思いながら、いつも開催準備をしています。

ふと心に灯った願いや葛藤は、日常の忙しさに紛れていってしまいますが、それでもその火種は、心の奥底でずっとチラチラ燃えています。

ゲストお三方のお話、私自身「どんな課題が提起されるだろう?」一参加者として胸が高まっていた中、振り返っていくつかの共通点を感じています。「やはりポイントは……」「こういう制度があれば……」という想いが脳裏をよぎりますが、「あの人が言ったから」でなく、自分自身で感じて考えていく。オール大人が真剣に向き合う。

遅くなりましたが、「保育の課題に向き合う」facebookグループも作ります✨

また今度は「こんな作戦で、保育の課題を解決しようぜ」で会いましょうっ!?☺️

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